実数論3〜反数、減法、加法4つの公理〜【専門数学シリーズ】

実数論の公理3

今回は、実数論パート3ということで、反数、減法、加法4つの公理について解説していきます。

ちなみに、
減法とは、いわゆる引き算です。

過去の実数論はこちらを参考にしてください。

目次

反数の公理

加法の公理に入る前に、まずは反数の公理を定めておきます。
なぜなら、反数の存在が後の減法につながるからです。

公理4【反数の公理】

ー(マイナス)の記号は\(\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\)の写像である

どういうことかというと、つまりa∈\(\mathbb{R}\)に対して、-(a)∈\(\mathbb{R}\)が定まるということです。

つまりこれがマイナスの誕生なのです。

aに対して、-aをaの反数をいいます。

例えば、3に対して-3が3の反数。1に対して-1が反数というわけですね。

減法の定義

反数と加法の組み合わせが減法になります。

減法の定義

a,b∈\(\mathbb{R}\times\mathbb{R}\)に対して、公理3と公理4を合わせて、

a+(-b)∈\(\mathbb{R}\)が定まる。

a+(-b)=a-bとも表現する。

復習ですが、公理3は、+は(\mathbb{R}\times\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R})への写像です。

そして、反数の公理を組み合わせれば、反数の加法が成り立ち、これを減法と表現します。

なぜ減法を公理の組み合わせで定義するのかというと、なるべく公理は増やさないのが数学の方針だからです。
なので減法の公理を増やすよりは、公理をうまく組み合わせて定義する方がシンプルで美しいというわけですね。

イメージするなら、潤沢なお金で美味しいものを食べるより、少ないお金であれこれ工夫して作った庶民飯の方が幸せ感あるみたいな感じでしょうか笑

加法4つの公理

加法4つの公理とは、簡単に言えば足し算4つのルールということです。
今まで我々が行ってきた足し算は以下のルールに従って行ってきたのですね。

公理5【加法4つの公理】

a,b,c∈\(\mathbb{R}\)とする。

(1)a+b=b+a(可換法則)

(2)(a+b)+c=a+(b+c)(結合法則)
※a+b+cとも表記できる

(3)a+0=a(0の性質)
※0は加法の結果を変えない。0は単位元とも言える

(4)a+(-a)=0(反数の性質)
※すなわちa-a=0

【補足】0と反数の一意性について

一意性とは、それがただ一つ存在することを意味します。
つまり、0と反数の一意性とは、0と反数がそれぞれ1つしかないよってことです。

「当たり前じゃね?」と思うかもしれませんが、今の段階では、まだ実数の定義と0は実数であることしか明言していません。

なので、0のような性質を持つ数字が複数ある可能性があるのです。

結論言えば、0も反数も1つしかないと言えるので、複数ある可能性はないです。
しかし、もし複数存在したならば、きっと数学の世界はまるっきり変わっていたでしょうね。

0の一意性の証明

公理5の(4)a+0=a(0の性質)を持つ元が0,0’∈\(\mathbb{R}\)存在すると仮定する。

すると、任意のa∈\(\mathbb{R}\)に対して(※任意とは全てのという意味です)

a+0=a ー①
a+0’=a ー②

となる。①②のaは任意なので、

①のaに0’、②のaに0を代入すると、

0’+0=0’ ー①’
0+0’=0 ー②’

①’に可換法則を用いると、0+0’=0′

よって0=0’となり、0と0’は一致する。

以上から0の性質を持つ元はただ1つである。

0の一意性を証明しましたが、反数の一意性も重要になります。

ですので、反数もただ1つしかないことを証明しておきます。

反数の一意性の証明

公理5の(3)を持つ元がx,y’∈\(\mathbb{R}\)存在すると仮定する。

すると、任意のa∈\(\mathbb{R}\)に対して(※任意とは全てのという意味です)

a+x=0 ー①
a+y=0 ー②

となる。①②の右辺は0であるから、

a+x=a+y ー③

③の両辺に左から-aを加えると、
-a+a+x=-a+a+y ー④

④の左辺から式変形していく

(左辺)=-a+a+x
=a+(-a)+x(可換法則)
    =0+x(反数の性質)
=x+0(可換法則)
    =x(0の性質)

④の右辺も式変形していく

(右辺)=-a+a+y
=a+(-a)+y(可換法則)
    =0+y(反数の性質)
=y+0(可換法則)
    =y(0の性質)

よって、x=yとなる。

以上から反数の性質を持つ元はただ1つである。

上記の証明に関して、めちゃくちゃ回りくどい式変形しているなぁと感じるかもしれません。
ですが、式変形は1つの=に対して、1つの公理、定理の適用が原則です。

そうすることで、論理をちゃんと追いながら証明できます。

パパっと飛ばしてしまうのは得策ではないのです。

まとめ

今回は、反数、減法、加法4つの公理をご紹介しました。

少しずつ我々が知る算数に近づいてきた気がしますね。

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