【大ベストセラー!】幾何学の父、ユークリッドの功績と生涯、原論について

ユークリッド 生涯

どうも、丸田です。
今回は幾何学の父、ユークリッドをご紹介します。

ユークリッドについて

ユークリッドは数学業界にとてつもない影響を及ぼしている人物で、「ユークリッド空間」「ユークリッド距離」「ユークリッド幾何」など、彼の名前が使われてる用語がいくつも存在します。

またユークリッドは数学の定理をまとめた「原論」を出版しており、この本なんと世界で2番目に売れているのです。

丸田

まさに数学界の大ベストセラー!

1番は聖書ですから、原論は数学版「聖書」と言っても過言ではありません。

そんな数学の神とも呼べるユークリッドはどんな人生を送ったのか、また原論は一体何が凄いのか。
その秘密に迫りたいと思います。

目次

ユークリッドの生涯

古代の天才数学者、ユークリッドの生涯を追っていきましょう。

勉強に励んだ少年ユークリッド

舞台は紀元前330年頃。シリアの片田舎にユークリッドは生まれました。

ユークリッドの家庭はとても勉強熱心で、特にユークリッドの父は勉強面において心配ばかりしていたそうです。

ユークリッド少年時代
丸田

親が子の勉強を心配するのは、どの時代も変わらないのが興味深い

その影響を強く受け、ユークリッドは勉強に打ち込みます。

そんな生活を送る中、ユークリッドは父からこのように言われました。

ユークリッド父

シリアでは何も学べん!
ギリシャのアテネに行くがよい

当時のアテネは、プラトンの設立したアカデメイアによって哲学や自然科学、天文学など、知識の文化で賑わっていました。

だからこそ、父は「勉強するならアテネだろ!」と思い提案したわけですね。

現代で言うなら、「田舎から上京する」みたいなイメージでしょうか。

ユークリッドはその提案を受け、アテネへ向かうことに。
そこでプラトンの学びを受けた様々な哲学者、数学者と一緒に長いこと勉強したのでした。

ユークリッドは幾何学への理解を深め、研究に打ち込みます。
やがて才能をメキメキ発揮し、ギリシャの国にユークリッド名が広がっていったのでした。

ユークリッドの業績

【参考記事】プラトンに関する記事はこちら
哲学者プラトンとは?功績やアカデメイアについて

大学校の講師として招かれる

講師

その頃、エジプトの都市アレクサンドリアは賑わっていました。

アレキサンダー大王の後継者であるプトレマイオス一世がアレクサンドリアを統治しており、街に大学をはじめ、図書館や動物園・植物園、実験所などを建設していたのです。

プトレマイオス一世はユークリッドに着目し、アレクサンドリア大学の講師として招くことにしました。

そこから、ユークリッドは講師として活躍することとなります。

教えるテーマはユークリッドが得意な「幾何学」だったのですが、非常に難解だったと言われています。

ユークリッドの講義には、プトレマイオス一世も出席していたのですが、「ユークリッドよ。幾何学はどうも難しい。どうにかして楽な勉強方法はないものかね」と尋ねたところ、

ユークリッドはパシっと、「王よ!幾何学に王道はありませんぞ!」と発言したそうです。

これはユークリッドが幾何学をいかに重要視していたかが垣間見える有名な逸話です。

丸田

さすがユークリッド!!王にすら堂々と発言するなんて!
おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!

原論を出版

書籍

紀元前300年頃に「原論」が出版されました。

原論とは数学の定理をまとめた書籍なのですが、これがもう売れに売れました。

現在では売上No.1の聖書に次いでNo.2です。
とてつもなく売れています。

科学者であり数学者のアルキメデスも原論を活用していたそうです。

3〜5世紀頃は、エジプトで広がり、8〜10世紀には、アラビア語に翻訳され、アラビア数学に浸透。
11〜12世紀には、ラテン語に翻訳されヨーロッパに伝承されていきました。

現代のようにネットはないので、世界に浸透するには多少時間はかかります。
それでも世界中に普及したのは凄まじいですよね。

しかもその頃、著者のユークリッドは30代の頃。
いかにユークリッドが天才だったかがわかるエピソードです。

原論には数学の定理がまとめられていますが、その中でも「幾何学」に関する知識がギッシリ詰め込まれていました。

この原論は別名「エレメント」と呼ばれるのですが、今現在も使われているそうです。
(若干、変更は加えられていますが、内容の根幹はあまり変化なし)

丸田

紀元前に発見された定理が現代にも通用するとは、かなり普遍的な内容だったことがわかりますね。

他にも、幾何学や数論、素数に関する研究をし続け、ユークリッドは紀元前275年頃まで生きたと言われております。

ユークリッドの残した業績

ユークリッドは生涯に数々の業績を残しましたが、「原論」が一番有名です。

では、「なぜ原論はそこまで凄いのか?」を解説していきます。

結論からいうと、原論のスゴさは数学の「公理(こうり)」というものを明確に定めたことにあります。

丸田

こうり?冷たいやつ?

と思われたかもしれませんが、簡単にいうと「論理の前提」を明確にしたのですね。

数学の特徴は論理を積み重ねて、様々な定理や定義を発見していくことです。

ですが、どれだけ厳密な理論を積み重ねても、一番最初の土台が曖昧だとその理論は意味がありませんよね。

数学では、論理の土台を「公理」と呼びます。

現代の数学という学問を1本の木に例えるなら、「定理」が葉っぱ、「定義」が木、「公理」が土みたいなイメージです。

公理系

土がしっかりしているから、木が元気に育ち、木が育つから緑が生まれます。
それと同じで数学は、厳密な「公理」を決め、「定義」をしているから、いろんな定理が生まれるし、その定理を信頼することができるのです。

しかし、当時はそのような考えを持つ者はいませんでした。
そんな中、ユークリッドは数学の論理においても、確固たる土台が必要だと気づいたのですね。

この数学の土台を固めたのが原論なのです。

この公理が定まったことが、数学そのものの安定性を高めたのですね。

丸田

なるほど。そりゃ原論売れるわな

特にユークリッドは幾何学に精通していたので、幾何学に関する5つの公理を定めました。
(※公理は昔は「公準」と呼ばれました)

以下、ユークリッドの公理(=公準)です。

原論における幾何学5つの公理
  1. 任意の2点が与えられたとき、それらを端点とする線分を引くことができる。
  2. 与えられた線分はどちら側にでも、いくらでも延長することができる。
  3. 与えられ任意の点に対し、その点を中心として任意の半径の円を描くことができる。
  4. すべての直角は互いに等しい。
  5. ある直線が他の2直線と交わるとき、同じ側の内角の和が2直角より小さいならば、この2直線は限りなく延長された時、内角の和が2直角より小さい側で交わる。

まぁぶっちゃけ、この公理(公準)の内容自体は「当たり前じゃね」と思えるような内容です。

ですが、公理を定めることは非常に難しいのです。
なぜなら、公理(=公準)は、論理の大前提の部分であり、証明ができないからです。

論理とは「主張+根拠」で成り立っています。
例えば、「京都に行くなら飛行機を使いましょう(主張)。なぜなら、早くついた方が、いろんな場所を巡ることができるからです(根拠)。」は論理的ですね。

普段から、我々はこのような思考や会話をしています。

しかし、論理の大前提となる公理とは、「主張」しか存在しません。
だからこそ、公理(=公準)は100人中100誰が「異論なし!」と言えるような超厳密に、め〜ちゃくちゃ慎重に定める必要があったのです。

丸田

ここで公理を間違えれば、この先何千年先の数学が崩れ去ってしまうのです。

公理を定めるという、大偉業を成し遂げたのがユークリッドなわけですよ。

ユークリッドが定めた公理は、現在に至るまでさまざまな数学者が反論がないか調べ尽くしているのですが、今のところ公理に誤りはないと考えられています。(非ユークリッド空間を除く)

なので、おおよそ同じ内容で現在も使われているのです。(技術の進歩で多少変化していますが)

まさに「幾何学の父」に相応しい活躍です。

※この記事ではユークリッドの5つの公理をご紹介していますが、原論にはもっと複数の公理が掲載されています。もし興味があれば調べてみてください。

【補足】公理は現代社会でも使われている考え方

公理という言葉自体は、聞いたことはないかもしれません。
ですが、現代社会において使われている考え方の1つです。

社会における一番分かりやすい公理の1つは「法律」だと思っています。

法律には主張しかなく、根拠がありません。
その法律を破ればどんな事情があれ、無条件で罰則があります。

現在は、法律が正しく機能しているから秩序が保たれていますが、ここが狂うと社会も狂います。

わかりやすいのが昔の「王様が絶対」みたいな時代。
これは「王様=公理」なので、王様が優れていれば国も平和ですし、王様が腐っていれば国もいずれ滅びるわけですね。

もっと身近な例で言うなら、例えば人間関係で悩んでいたとしましょう。
その悩みを改善するために「人間関係を良くするコミュニケーション術」という本を買うとします。

中にはいろんな会話術のコツやノウハウがあることでしょう。

「相手の目を見て話す」「大きな声で挨拶する」みたいな内容でしょうか。

どんないろんなコツやノウハウが記載されていたとしても、「人を殴ってはいけない」「暴力を振るってはいけない」「人を◯してはいけない」なんて情報ありますか?

ないですよね。

確かに人に危害を加える人は、人とコミュニケーションは取れないでしょう。
ですが、それは人を危害を加えるから会話ができない以前に、「そもそも、やっちゃダメだよね」という大前提が存在しているのです。

逆に言えば、カッとして相手に手を出してしまう人であれば、コミュニケーション以前に、まずはその改善から始めなければならないわけです。

つまり、コミュニケーションには「相手に危害を加えてはいけない」という明言はされない大前提(=公理)が存在しているのですね。

もちろんこれは、さまざまな場面でも言えますし、シチュエーションによっては、独自の大前提(=公理)は存在します。

誰かと議論をする場合、会話をする場合、打ち合わせなどなど。

  • なるべく早めに頼むよ
  • うちの会社の社風に合ってない
  • あの人、常識ないよね

みたいな、曖昧で意味が明確ではない言葉が飛び交うこともあると思います。

これは無意識下に見えない大前提が存在しているのです。

この大前提を捉え間違うと、会話や議論の方向があらぬ方へ進んだり、最悪望んでいない状況になることも少なくありません。

そういった意味では、大前提を意識することはとても大切であり、数学の公理への考え方は実社会にも役立つ側面があるのです。

幾何学の父、ユークリッドの功績と生涯、原論のまとめ

今回のユークリッドの功績と生涯、原論について解説しました。
ユークリッドが原論で定めた「公理」がとにかくすごい!と言うことが伝わっていれば嬉しいです。

ユークリッドが紀元前に築き上げた幾何学の基本的原理や公理は、現代でも幾何学の基盤となっております。
だからこそ、現代の数学者は安心して定理を導き出せるわけですね。

数学界の幾何学の父、そして大ベストセラー作家ユークリッドの解説を終わります。

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